数あるカジノゲームのなかで、ブラックジャック(Black Jack)は際立ったおもしろさがあります。特に、ギャンブルを攻略してやろうと考える熱心なプレイヤーにとって。
ルーレットやバカラは、勝って帰れるかは運次第。だから初心者でも経験豊富なベテランでも勝率は厳密にはまったく同じです。(いろいろ戦略はありますが、結果の生じる確率までを変えることはできない)
一方でブラックジャックは、運ももちろん必要ながらゲームの結果や収支が、自分の判断に左右される特徴を持っています。つまり、やり込むほどに負けるリスクを減らして勝てる可能性を高めることができる。頭を使わない運頼みのゲームは興味がない、実力の介入するガチなゲームの方が好き、という方にはぴったり。
このページは、そんなブラックジャックのゲームの概要、基本ルール、プレーの流れ、専門用語、ディーラーへのジェスチャー、そして勝つための知識(最低限、不用意なミスで負けない)ための基礎戦略(ベーシックストラテジー)まですべてまとめたBJガイドブックです。旅先のカジノでプレーする際に十分お役立てください!
このページの内容
ブラックジャックってどんなゲーム?
ブラックジャックはトランプを使ったテーブルゲーム。略称はBJ。別名21(トゥエンティ・ワン)とも呼ばれます。
その名のとおり、ディーラーとプレイヤー(あなた)にカードが配られ、カードの点数が21を超えない範囲で21に近いほうが勝ち、というゲームです。
起源は諸説あり。16世紀ごろのヨーロッパ各地に似たようなゲームの記録が残っていて、それが改良を重ねられて現在の形になったとされています。
冒頭で触れたように、同じテーブルゲームでもルーレット、バカラ、クラップス、レッドドッグなどは自分は賭けるだけの立場であって、結果は出目やカード次第=運次第です。あなたが結果に介入することはできません。
これらのゲームも賭け方の工夫・賭け金の調整などによって勝ち逃げの可能性を高めることはできるかもしれませんが、結果そのものはルールに組み込まれた確率によって完全に支配されています。(つまり、払戻率・期待値が固定されている)
一方でブラックジャックは、ゲームの進行中にあなたの判断・意思決定の機会があり、その選択によって結果そのものが変わります。よって、明確に運以外の要素が収支に影響を与えます。言いかえると、上手いと儲かりやすくなり、下手だと損しやすくなる。知っていると勝ちやすく、無知だと負ける。払戻率・期待値が状況によって変動するゲームです。
ギャンブルの世界では、このようなゲームの性質の違いを技術介入性の有無と言い、ルーレットやバカラなどは技術介入できないゲーム、ブラックジャックは技術介入できるゲームに分類されます。(カジノ以外なら、麻雀やスポーツベッティングなども技術介入性があるギャンブル)
技術介入性のないゲームは、昨日今日始めたビギナーでも10年プレーを続けているベテランでも、勝てる見込みはまったく同じ。どれだけやり込んでも変わりません。(だから簡単で誰でも楽しめるという良さもあります)
反対に、技術介入性があるゲームは理解の度合いで収支が大きく変わります。自分の判断が勝敗と収支へダイレクトに影響するため、勝てた際は「単にラッキーで勝った」という感覚とは別次元の達成感や喜びがあり、それが最高におもしろい。
ブラックジャックはそのような技術介入性があることから、長い間ギャンブラーたちが攻略を試みてきました。そして実際にチームプレーによってラスベガスのカジノを大損させた実話もあり、『ラスベガスをぶっつぶせ(原題:21)』という映画にもなっています。そして「カジノで唯一勝てるゲーム」として爆発的な人気を獲得しました。その後、カジノが攻略法の対策をして完全攻略はできなくなりましたが、人気は衰えず世界中で楽しまれています。
ブラックジャックのルール
では、ここからは具体的にどのようなゲームかみていきましょう。
ブラックジャックは、既述のとおりディーラーとあなたのカードの点数を競うゲームです。賭け金をテーブルに置いたら、あなたには表向けで2枚、ディーラーは表1枚+裏1枚で2枚配られます。
この状態で勝負スタート。
カードの点数の数え方
ゲームの進行を知る前に、カードごとの点数の数え方をご覧ください。
10と絵札は10点で計算します。
2~9は数字のままの点数として計算します。
A(エース)は特殊で、1点か11点かを選べます。
例えば、自分の手札がAと8なら「11 + 8 = 19点」か「1 + 8 = 9点」のいずれかになります。状況によって自分でどちらとみなすか選べるため、「Aは1か11点」とだけ覚えておいてください。
ブラックジャックのゲームの流れ
- 賭け金を置く
- カードが配られる
- プレイヤー(あなた)の選択(カードを追加する・そのまま勝負、など)
- ディーラーの伏せてあるカードをオープン
- ディーラーの点が16点以下なら、17点を超えるまで追加し、17点を超えたらストップ
- 結果の判定と払戻し
ブラックジャックはこのように進行します。
カード配布後、最初はプレイヤーの選択です。自分の手札をみて、そのままの点数で勝負するのか、さらにカードを追加して21点に近づけるのかを判断します。(状況によって、ほかにもいくつか選択肢あり)
プレイヤーの選択が済むと、ディーラーが伏せてあるカードを開示します。ディーラーは、合計得点が16点以下なら17点以上になるまでカードを追加し、17点を超えたら自動的にストップ。つまりディーラー側に意思の介入、選択権はありません。
そして両者の点数を比べて、より21点に近い方が勝ち。
とても簡単ですね。
ブラックジャックの要点
ゲームの重要なポイント(及び勝利時の払戻し倍率)は以下。
- プレイヤーとディーラーに配られたカードの点数を競う
- 21を超えない範囲で21に近い方が勝ち
- 勝てば2倍で払戻し
- 21を超えたら即座に負け
- 同点なら引き分けで返金
- 最初の2枚がAと10点ならブラックジャック。2.5倍で払戻し
勝ったら賭け金の2倍を受け取ります。カードを追加して21点を超えてしまったら、ディーラー側の手札を開示せずに即座に負けが確定、賭け金を回収されます。この、21を超えたら負けという条件はディーラー側も同じです。ディーラーには16点を超えるまでカードを追加するという縛りがあるため、例えば16点の状態で5点以上を引けばディーラーの負けとなります。
そして、最初に配られた2枚のカードがAと10点の状態をブラックジャック(別名ナチュラル21)といいます。通常の勝利が2倍なのに対して、BJによる勝利は2.5倍での払戻し。ルーレットやクラップスのように配当の違いがいろいろ無くてシンプルですね。
ちなみに、このゲームが普及し始めた当初は「スペード(黒)のエースとジャック」のみがブラックジャックだったのですが、すべてのエースと10と絵札の組み合わせをそう呼ぶように改良されました。また、例えば最初の2枚の点数が16点で、3枚目に5を引いて21になってもそれはブラックジャックとは呼びません。単なる21点です。
ブラックジャックの専門用語
続いては、ゲームの進行過程で使われる用語、プレイヤーの選択(アクション)の呼称などをご説明します。
ハンド、アップカード、ホールカード
ハンドは手札のこと。手札にAを含むものをソフトハンド、Aが無いものをハードハンドと言います。
アップカードはディーラーの見えているカード、ホールカードは裏向けのカードのこと。
プレイヤーの基本的な2つの選択肢「ヒットとスタンド(ステイ)」
最初にカードが配られたあと、プレイヤーには大きく2つの選択肢があります。1つはヒット(Hit)、もう1つはスタンド(Stand)です。(スタンドはステイとも言います)
ヒットは、もう1枚カードを追加すること。ランドカジノなら、自分のカードの手前あたりを指でトントンと叩いて「カードが欲しい」という意志を示します。
スタンドは、カードを引かないこと。最初の2枚のまま、あるいは3枚、4枚と引いてそこで追加をやめるなら、手のひらをテーブルに水平にして左右に振り、「これ以上不要です」と示します。
ダブル(ダブルダウン)
ダブルダウンは、賭け金を2倍にしてカードを一枚だけ追加するという選択です。ダブル、ダブリングダウンとも言います。
少し脇に逸れた話をすると、ブラックジャックでは10点と計上するカードが10、J、Q、Kの4種類あり、1~Kまでの13種のカードのなかで実に30%を占めています。つまり、確率的には次に10を引く可能性が最も高い。(これをテン・ファクターと言います)
例えば自分に配られた2枚の合計が9点や10点なら、次に10を引いてくると19点や20点となって勝てる見込みが非常に高くなるため、ダブルはそうしたチャンスで儲けを増やすために使用します。
基本的には自分の点数が何点でもダブルは使用できますが、カジノによっては「9点、10点、11点のときだけ使用可」と制限されていることもあります。
スプリット
スプリット(スプリッティングペア)は、配られた2枚のカードが同じ点数だった際に、最初の賭け金と同額をテーブルに置いてカードを2つに分け、別々のハンドとして勝負ができるという選択です。
例えば最初の2枚が8と8なら、そのままだと16点として数えます。これをスプリットすると、片方の8に1枚、もう片方にも1枚追加されて別々の扱いとなり、それぞれヒットやスタンドの選択を行います。よって、両方勝つ、両方負ける、片方勝つなどの結果が生じます。
サレンダー
サレンダーは降参という意味で、カードが配られた時点で、賭け金の半額を支払って勝負から降りるという選択です。自分の点数が、ディーラーの表向きのカード(アップカード)から推測して分が悪そうだと感じたときに使用するオプション。カジノによって、サレンダーの可否は異なります。
バスト(バースト)
3枚以上のカードを引いて合計が21点を超えることをバスト(バースト)と言います。
バストすると即負けが確定し、賭け金を回収されます。プレイヤー(あなた)が21点以下でスタンドし、ディーラーがバストしたらディーラーの負け。
プッシュ
同点で引き分けることをプッシュと言い、プッシュなら賭け金が戻ってきます。
インシュアランス
ディーラーのアップカードがAの場合、裏向けのカードが10点でブラックジャックが成立している可能性に対する保険として、プレイヤーにはインシュアランス(Insurance)という選択が与えられます。(インシュアランスは保険という意味)
インシュアランスを使用する際は、賭け金の半額をテーブルにおきます。そして実際にBJだった場合は、インシュアランスとして賭けた分の2倍の配当を得ます。最初の賭け金は負け扱いで回収されますが、インシュアランスの配当によって半額は損失を回避できる選択です。インシュアランス使用後、もしもディーラーのBJが不成立なら、インシュアランスの賭け金は没収されゲームが通常通りスタートします。
おまけのサイドベット
カジノによってはサイドベット(おまけの賭け)がいくつかあり、ペアベット(Pair Bet)という賭け枠がテーブルに用意されていることがあります。ペアに賭けると、最初の2枚が同じカードのときに配当を得られます。倍率はカジノによって異なり、数字のみが一致(絵柄不一致のペア)と数字も絵柄も一致(パーフェクトペア)でも異なります。ペアベットは完全に運頼みのギャンブルです。
デッキ、シャッフル、ディスカード
ブラックジャックに限らず、カジノでは52枚1セットのトランプの束をデッキ(デック)と言い、1組で行うゲームをシングルデッキと呼びます。ブラックジャックは6組か8組のカードを使用するのが一般的で、ゲームの開始前にはマシンがかき混ぜます。(シャッフルする)そして、最初に何枚かのカードを使用せずにゲームから除外します。これをディスカードと言います。
ブラックジャックのベーシックストラテジー(基礎戦略)とは?
さて、ここからはゲームをさらに深く追求していきます。
ブラックジャックは、本質的には「推理・予想ゲーム」です。
自分に配られたカードの点数とディーラーのアップカードを踏まえ、「ホールカードが何点で、ディーラーは合計何点だろうか?そして自分が勝つためにはカードを追加すべきかそのまま勝負するか?」を考えます。
もしもディーラーの点数が完全にランダムであり、結果が毎回偶然に左右されるなら予想しようがありません。しかし、実際はそうではありません。数学者やギャンブラー達の長年の研究によって、「自分の2枚と、ディーラーのアップカードの1枚」による3枚の組み合わせのパターン、その状況別の確率が計算されています。
例えば、ディーラーのアップカードが7点のとき。プレイヤーがカードを引こうが引くまいが、ディーラーの手が最終的に17~21点になる可能性は74%あります。また、自分の2枚の点数が12点のとき、もう1枚引いて良くなる確率は69.23%。このようなデータは、膨大な統計によって導き出されたもの。
最初に見えている3枚の組み合わせは550通り(類似のものをまとめると30種類)のパターンがあり、実はそのパターンごとに「この状況ならヒット」「この点数ならスタンド」などの最適な選択があらかじめ決まっています。この選択に従うことが確率上もっとも勝率が高くなり、不用意な負けを最小限におさえるための基礎知識であることから、ベーシックストラテジー(基礎戦略)と呼ばれています。
詳細は以下の表をみてください。
ベーシックストラテジー表
まずはAを含まないハードハンドから。最適な選択は以下のとおりです。(Hはヒット、Stはスタンド、Dはダブルダウン、Srはサレンダー、Spはスプリット) *サレンダーができない場合はヒット
あなたの 最初の2枚↓ |
ディーラーのアップカード | |||||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | A | |
8点以下 | H | H | H | H | H | H | H | H | H | H |
9点 | H | D | D | D | D | H | H | H | H | H |
10点 | D | D | D | D | D | D | D | D | H | H |
11点 | D | D | D | D | D | D | D | D | D | H |
12点 | H | H | St | St | St | H | H | H | H | H |
13点 | St | St | St | St | St | H | H | H | H | H |
14点 | St | St | St | St | St | H | H | H | H | H |
15点 | St | St | St | St | St | H | H | H | Sr | H |
16点 | St | St | St | St | St | H | H | Sr | Sr | Sr |
17点以上 | St | St | St | St | St | St | St | St | St | St |
続いて、Aを含むソフトハンドの場合。
あなたの 最初の2枚↓ |
ディーラーのアップカード | |||||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | A | |
A,2 | H | H | H | D | D | H | H | H | H | H |
A,3 | H | H | H | D | D | H | H | H | H | H |
A,4 | H | H | D | D | D | H | H | H | H | H |
A,5 | H | H | D | D | D | H | H | H | H | H |
A,6 | H | D | D | D | D | H | H | H | H | H |
A,7 | St | D | D | D | D | St | St | H | H | H |
A,8 | St | St | St | St | St | St | St | H | H | H |
A,9 | St | St | St | St | St | St | St | St | St | St |
A,10 | ブラックジャック |
こちらは、同じカードが2枚きてスプリットできる状況のとき。
あなたの 最初の2枚↓ |
ディーラーのアップカード | |||||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | A | |
A,A | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp |
2,2 | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | H | H | H | H |
3,3 | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | H | H | H | H |
4,4 | H | H | H | Sp | Sp | Sp | H | H | H | H |
5,5 | D | D | D | D | D | D | D | D | H | H |
6,6 | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | H | H | H | H | H |
7,7 | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | H | H | H | H |
8,8 | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp |
9,9 | Sp | Sp | Sp | Sp | Sp | St | Sp | Sp | St | St |
10,10 | St | St | St | St | St | St | St | St | St | St |
プレイヤーの2枚とディーラーのアップカードに応じた最適な選択はこの表で示すとおり、そして言葉で重要なポイントをまとめました。
【重要ポイント.1】 17以上はスタンド!
Aがないハードハンドの17点以上は必ずスタンド。そしてA&9の20点もスタンド。10と10はスプリットできるのですが、20点なのでスタンドします。
【重要ポイント.2】 ダブルが使えるチャンスを逃さない
ベーシックストラテジーの表内にダブルが組み込まれているのは、その点数のときはプレイヤーが確率的に勝ちやすいため。
利益を少しでも増やすべく、ダブルのチャンスを逃さないようにしましょう。ハードハンドの9、10(5&5の10点は、スプリットせずにダブル)、11、そしてソフトハンドの一部はダブルの機会です。
【重要ポイント.3】 A&Aと8&8はいつでもスプリット
スプリットすべき状況で覚えておきたいのは、「A & A」と「8 & 8」はディーラーのアップカードに関わらずスプリットすること。
既述のとおり、ブラックジャックは次に引くカードが10点の可能性が最も高いため、Aをスプリットして両方に10がきたら21点ずつ、8でも最高18点として勝負できます。ブラックジャックで16点は最悪の手(ヒットすると21を超えバストする可能性が高く、スタンドしても勝てる見込みが低い)であるため、8と8に分解して可能性を増やすということです。
使用するカードの組数やサレンダーの可否などから、最適な選択は若干異なることがあります。しかし、ランドカジノでは、フロアにベーシックストラテジー表が置いてあることもあるため事前に確認しましょう。
ブラックジャックは連帯ゲーム
ブラックジャックのテーブルは5~7人掛けになっています。そして、1つのカードの束からプレイヤーとディーラーに順番にカードが配られ、ディーラー側からみて一番左端のプレイヤーから順にヒットやスタンドなどの選択を行います。よって、あなたの選択が、他のプレイヤーの勝敗に影響を与えます。同じく、他のプレイヤーの判断があなたの勝敗を左右します。
例えば、よくある事例はあなたの右隣に座っている人(あなたより先にカードを配られる人)が不必要に引いたカードが、自分にとって最良のカードだったとか。同じように、あなたがヒット/スタンドしたことで次の人が良いカードを引くこともあります。反対に、他のプレイヤーの影響で自分または次の人がバストすることも。
相席しているのが知人か見ず知らずかに関わらず、2人以上が席についていれば勝敗はその全員の技量と判断にかかっていると言えます。だから、確率的に負けにくくするためのベーシックストラテジーは、そのテーブルにつく全員が知っておきたい共通理解、暗黙の了解のようなもの。
無謀なヒットや不可解なスタンドを繰り返していると、もし熟練のプレイヤーが先に座っていたら「荒らすな」というニュアンスの注意を受けるかもしれません。(以前、無知だったころにマカオのカジノでずいぶん嫌な顔をされ、後になって睨みつけられていた理由が分かりました笑)
他のプレイヤーのことを気にしすぎる必要はありませんが、あなた自身の勝率を高めるためにも「ベーシックストラテジーというものがあり、状況別に最良な選択がある」ということはザックリ頭に入れておいて下さい。そうすると、他のプレイヤーが一喜一憂する理由もみえてきますし、同じテーブルに座る全員がうまく勝てたときの連帯感も楽しい。ブラックジャックのプレーが一層おもしろくなります。
大切なのは、たとえ完璧にベーシックストラテジーにしたがった選択をしても、それは「確率的に負けが最小限になる」だけで、ブラックジャックの攻略法ではないということです。
だから、ピンときたら自分の直感を信じてベーシックストラテジーから外れた判断をしてももちろん構いません。それもこのゲームの醍醐味です。
ブラックジャックの展開シミュレーション
さらにブラックジャックがどのようなゲームかイメージを掴んでいただくために、いくつかのシミュレーションをご用意しました。ここで挙げた例では、あなたがディーラーと1対1で勝負、すべて賭け金は100ドルと仮定しています。
パターン1(あなたの勝利)
あなたのカード
ディーラーのカード
あなたの点数は12点、ディーラーのアップカードは10点。ベーシックストラテジー表をみるとあなたの最適な選択はヒットなので1枚ヒットします。
ヒット後のあなたのカード
8点を引いたので、あなたの点数は7+5+8=20点となりました。17点以上はスタンドが基本なので、これ以上はヒットしません。そしてディーラーの裏向けのカード(ホールカード)がオープンされます。
ディーラーのホールカードを開く
ディーラーのホールカードは5点だったので、10+5=15点です。ディーラーは16点以下なら必ずヒットしなければなりません。
ディーラーがヒット
ディーラーがヒットしたカードは3点でした。合計で10+5+3=18点となりました。ディーラーは17点以上になるとスタンドする決まりがあるため、これ以上は引きません。
決着
あなたは20点、ディーラーは18点。よって、この勝負はあなたの勝利です。100ドル賭けているので、100x2=200ドルの払戻しとなり、100ドル稼ぐことができました。
カードカウンティングとは?
もっとも原始的なブラックジャックでは、1つのカードの山からプレイヤーとディーラーに順番にカードを配っていき、使用済みのカードは専用の箱に入れるかテーブル内の穴に落としていき、次のシャッフルのタイミングまでは使用しません。
そして既述のとおり、プレイヤーとディーラーのカードの組み合わせによって勝率の違いや最適な選択の基礎戦略があるように、実はブラックジャックでは「山に残っていると、プレイヤーにとって有利に働くカード・不利になるカード」が統計的にはっきりしています。
ざっくり言えば、Aや10点はプレイヤーに有利に働く良いカードで、6以下の小さいカードは不利。だから、残りカードに10やAが多ければ勝率が上がり、少ないと負ける確率が高くなります。
この理屈を突き詰めたのがカードカウンティング。その名のとおり、「すでに使ったカードをカウントし(記憶し)、残りのカードの状況を把握してプレーの方法を変えていく」という戦略です。
この戦略がなぜ有効なのか、極端な例を挙げます。
もしも山に残ったカードが全部8だとすると、プレイヤーは絶対に勝ちます。なぜならプレイヤーは2枚で16点となり、ディーラーも同じです。しかし、ディーラーは17点になるまで必ずヒットしないといけないため、もう1枚カードを引いてくると必ず24点になり、100%バストします。よって最初の16点のままスタンドしていれば、黙っていても勝てるわけです。残ったカードが7が2枚と8が2枚でも同じ。
絶対に勝てるこのような状況だとあらかじめ分かっているなら、最大限まで賭け金を上げたいですよね。
これほど完全な状態でハマることはありませんが、「残りの山の状況」に合わせて賭け金を増減するのがカウンティングの基本。勝てる見込みが高い状況なら賭け金を上げて儲けを増やし、負けやすい状況なら損失を食い止めるため賭け金を小さくします。
実際はもっと複雑かつさまざまな方法がありますが、いずれにせよカウンティング戦略を用いてラスベガスのカジノで荒稼ぎした日系アメリカ人のケン・ユーストンとそのチームによる実話が、冒頭で触れた『ラスベガスをぶっつぶせ(原題:21)』という映画のモデルとなりました。
ただし、カードカウンティングの話には残念なことを付け加えなければなりません。
カウンティング戦略が発明されて「ブラックジャックは勝てるゲームだ」という認識が広まったことで、BJは一気にカジノゲームの花形となりました。しかし、ある一人のディーラーが「カードを全部使わずにシャッフルすればいい」という対抗策を思いつき、世界中のカジノがこれを導入。また、カードカウンティング行為、またはそれに順ずるとみなされる行為(例えば、メモしている・不自然な賭け金の増減・他のプレイヤーのカードまで目で追っているなど)が禁止されようになりました。
カジノには客を追い出す権利がありますから、現在は完璧にカウンティングを駆使してカジノに立ち向かうことはほぼ不可能です。さらに、毎ゲームごとに自動でシャッフルするマシーンを導入するカジノも増えてきていますから、そのようなテーブルではカウンティングは完全に無意味なものとなっています。
だから、どこかで聞きかじってカウンティング戦略を極めようとするのではなく、「残ったカードによって有利・不利はあるし、毎回は勝てるわけではない」と、理解しておく程度にとどめておいて下さい。
自分のメンタルや、勝敗と収支をカウンティングしておく方がはるかに大事です。
ブラックジャックに出てくる用語まとめ
ブラックジャック(Black Jack)
ゲームの名称であり、最初に配られた2枚がAと、10か絵札による組み合わせの21点のこと。ナチュラル21とも言います。
ヒット(Hit)
カードを1枚引くこと。
スタンド(Stand)
カードを引かずにとどまること。
ダブリングダウン(Doubling Down)
最初の2枚の状態から、賭け金を倍にして1枚だけカードを引くこと。
スプリット(Split)
最初の2枚が同じカードのときに、賭け金を倍にして2つの手に分けて勝負すること。
サレンダー(Surrender)
賭け金の半額を払って勝負から降りること。
インシュアランス(Insurance)
インシュアランス(インシュランス)とも言います。ディーラーのアップカードがAのときに、賭け金の半額をテーブルに追加して行使する保険。
バスト(Bust)
21点を超えてしまうこと。
プッシュ(Push)
引分けのこと。
サイドベット(Side Bet)
勝敗に賭ける以外の、例えば最初に2枚がペアであるかどうかなどのオマケの賭け。
ハードハンド(Hard Hand)
Aを含まない手。またはAを11点と数える手を指します。
ソフトハンド(Soft Hand)
Aを含む手。またはAを1点と数える手を指します。
ベーシックストラテジー(Basic Strategy)
基礎戦略。確率に基づいた最適な選択のこと。
ブラックジャックのルール解説・ゲームの進行・基礎戦略まとめ
以上、非常に長文となってしまいましたが「ブラックジャックがどのようなゲームか」はご理解いただけましたか?
一言に集約すると、ブラックジャックは簡単で奥が深いゲームです。完全な運任せのゲームよりも、運に加えて己の判断力・推理力などを総合した実力込みで勝負できるギャンブルの方が好きなら、カジノで一番のお気に入りゲームになるかもしれません。
ということで、ブラックジャックのプレーにあたってお役に立てば幸いです。ゲームの進行やルール確認のお供として、いつでもご活用を。
あなたの幸運を祈ります!!